アトリエ樫がつくる台所
アトリエ樫では、台所の流し台も、我々の生活を支える大切な家具の一つと捉え、製作家具で設えることが多々あります。
我家の台所のスケッチです。
シンプルで工夫に満ちた台所は、とっても楽しい。
「家具」
・収納:物の量
我々の日常生活の中で身近に置かれている物の量は膨大に増え続けています。消費すること、つまりは物を獲得することが、ある種生活の豊かさに置き換えて評価される、おかしな状況があるからでしょうか。住まいを計画する中、引越しを機会に、できるだけ不必要な物は整理できると良いですね。すべての物を処分するということではなく、自分自身にとって大切なものを見つける作業です。当然のことながら、我々は物を置く為に住まいをつくるのではありません。豊かな暮らしを生み出すために、住まいを構えるわけです。
・動くのか、固定なのか?/造り付け家具について。
家具を建築に固定するか否か、つまり造り付け家具にするのかは、計画の中でよく迷うところです。設計者はその建物に相応しい家具が出来あがることを望み、または、妙な家具が置かれてしまうことを嫌い、すべての家具を造り付けましょうなんて言ってくるかもしれません。確かに、造り付け家具とした方が、効率よく、すっきりと物が納まることは事実です。
しかし、全く家具を移動できない、模様替えの出来ない住まいはつまらないものです。計画段階で、間取りに家具を落とし込み、そこで繰り広げられる暮らしのかたちを、自分自身の暮らしに照らして考えてみてはどうでしょう。居間などは、出来れば2~3通りの家具レイアウトが可能なように考えられていると良いでしょう。暮らしは少しづつ変化して行きます。
<部屋の大きさとの関係>
部屋の大きさに制約があり、コンパクトにつくる必要がある場合には、家具を造り付けると有効ですね。
(玄関、洗面脱衣室、小さな書斎)
<部屋の用途との関係>
将来的にも用途が変わらない部屋は問題ありませんが、子供部屋等、将来その部屋の用途が変わって行く場合は、あまり家具を造り付けないほうが良いでしょう。
・今、持っている家具はどうするの?
基本計画の段階で、持ち込まれる家具のリストを作成します。新しい住まいに、こうした家具が持ち込まれた場合、多少の違和感があるのは事実ですが、事前に理解した上で計画を進めておくといいですね。それから、家具を収納する大きめの納戸をつくっておくと便利です。
・素敵な家具を一つ
竣工したての住宅は殺風景でつまらないもの。自分自身にとって居心地の良い素敵な住まいには、本物の素材で出来た素敵な家具を一つ置きたいもの。出来あがった住宅に相応しい家具を見つけるのも楽し、計画段階から、そこに置きたい家具を検討するのも楽し。置きたい家具をキーワードに計画を進めるといった設計のアプローチもあります。
・建具を使って簡単収納
我家には家具としての食器棚はありません。食器は奥行きの浅い押入状のスペースに収納されています。食器棚を買えば十数万円。そんなにお金を掛けないで、上手に建具を使って簡単収納。建具と収納家具は親戚関係みたいなものです。
・何処に
食器棚を庭につながる濡縁に面して設けた住宅を、以前雑誌で目にしたことがあります。食器棚は当然部屋内側からも利用できますが、濡縁からハッチをあけると食器を取り出せるようなつくりになっていました。住まい手の方は人を招いて、屋外で食事をされたりするのが大好き。そんな屋外パーティーの時に、さっと手を伸ばしてグラスを取り出し、冷たいビールをぐぐっと一杯。住まいの全体構成や間取りを検討し、ちょっとした工夫をすることで、日々の暮らしに潤いや楽しさを生み出すことも出来ます。